法定の期間経過後に相続放棄が認められなかったケース
法定の期間終了後に相続放棄が認めらなかったケースにはどのようなものがあるのか見てみます。
被相続人A死去後その債権者BからAの相続人Xらに対し、Aの債務につき内容証明郵便にて貸金返還請求を受けていたところ、Xらが請求を受けてから3ヶ月以上経過してから相続放棄の申述受理の申立てをして、被相続人Aが分籍していたので、相続は発生しないと確信していたの主張に対し、Bからの通知書には「法定相続人の貴方様に上記債務をお知らせする次第です。」と明記されていたことから、自分たちが被相続人の法定相続人であることを知ったものと認めるのが相当である(平成13年10月11日大阪高裁決定)。
つまりこの場合裁判所は、相続人のXはA死亡後に債権者Bからの通知により、Aに負債(借金)があったことを知っていたにも関わらず、法定の3ヶ月を経過するまで相続放棄の手続きをしなかったわけだから、Aの訴えは認められない、として、相続放棄の申述受理の申立てを認めませんでした。
その他 ケース
同様に法定の期間終了後に相続放棄が認められなかったケースを2つ紹介します。
民法915条1項所定の熟慮期間について、被相続人に高額の相続債務が存在することを知った日から起算すべきである旨の抗告人の主張に対し、遅くとも相続人が相続すべき積極及び消極財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべき時から起算すべきであるとした上、抗告人は、被相続人の死亡をその当日に知り、それ以前に被相続人の相続財産として、宅地約68.83平方メートル、建物約56.30平方メートル、預金15万円があることを知っていたといえるから、抗告人は被相続人の死亡の日にその相続財産の一部の存在を認識したものといえる(平成13年1月10日高松高裁決定)。
民法915条1項所定の熟慮期間について、相続人が負債を含めた相続財産の全容を明確に認識できる状態になって初めて相続の開始を知ったといえるので、その時点から起算すべきである旨の抗告人らの主張に対し、相続人が相続すべき積極及び消極財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべき時から起算すべきものと解するのが相当であるとした上、遅くとも、抗告人らが相続財産の存在を認識して遺産分割協議をした日から熟慮期間を起算すべきである(平成14年1月16日東京高裁決定)。
裁判所が期間経過後での相続放棄の手続きを認めなかったケースに共通するのは、相続人が被相続人の死亡や相続放棄すべき特別の事情があることについて「知ることができない特別の事情がなかった(裁判所が認めなかった)」ということです。